放射線治療システム
Versa HD™
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エレクタリニアックのフラッグシップ
高度なHigh-Definition Dynamic Arc技術
(High-Definition Dynamic Radio Surgery技術)
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IntelliBeamは、Versa HD™とMonaco™ (治療計画システム) との組み合わせでのみ利用可能な回転照射の技術です。従来のシステムと比較し、1アークあたり最大6倍以上のモジュレーションを提供し、より少ないアーク数とより短い治療時間を実現します。短時間での治療は患者様の負担を軽減させスループットを高めるとともに、照射中の予期せぬ動きを減少させることも期待できます。
定位治療での極小ターゲットへのアプローチ
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Virtual LeafはAgility™とMonaco™との組み合わせによって実現可能な極小ターゲットへの照射を最適化する技術です。Agility™のリーフ幅は5 mmですが、直交方向のダイアフラムを1mm単位でダイナミックに稼働させることで、最小1mmの仮想的なリーフ幅を得られます。これにより、極小ターゲットに対して専用機と同等の急峻な線量分布を提供し、周囲の正常組織への線量低減を可能にします。
フルフィールド5mm幅リーフ
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Agility™は、アイソセンタ位置で5mm幅、80対160枚のリーフを有する高精度、高精細なマルチリーフコリメータです。リーフ駆動速度の向上により、治療時間の短縮と効果的な強度変調が可能になります。非常に高い遮蔽能力によって、照射野外の正常組織や重要臓器への不要な線量を最小限に抑えます。リーフ位置検出に光学式システムを用いることで、リアルタイムで高い精度を保つことが可能になります。
高線量率モード
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FFF(フラットニングフィルターフリー)はX線ビームを平坦化させるフラットニングフィルターを介さずに照射することで、非常に高い線量率を得ることができる技術です。6MVと10MVのX線で使用することができ、最大線量率は従来のエレクタリニアックの4倍以上です。定位放射線治療のような高線量を投与する治療時間を大幅に短縮し、患者様の負担軽減とスループット向上に大きく貢献します。
診断用エネルギーによるX線イメージングシステム
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XVIは2D、3D および4D 画像を取得することができ、高速かつ高画質なイメージングと様々なレジストレーションツールにより、患者セットアップを容易に行い照射時の高い信頼性を提供します。骨合わせや腫瘍合わせだけではなく、2つのマッチングを同時に行い重要臓器とターゲットの位置関係を明確化し、安全な位置合わせを実現します。また、呼吸性移動のあるターゲットに対しては、外部デバイスなしで4D-CBCTを撮影し、寝台補正を行うことができます。さらに、治療直前の位置合わせだけではなく、治療中のkVイメージングによりターゲット位置を検証することで確信をもった治療を行うことができます。
高精度6軸寝台
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HexaPOD™ evoは6軸の自由度を持った動きで患者ポジショニングを可能とする治療寝台です。XVIにより算出された6軸補正値をオンラインにて受け取り、ワンタッチでサブミリメートルの高精度な6軸補正が可能になります。
高精度放射線治療計画装置
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Monaco™は、3D-CRT からVMATを含むIMRTプランニング、定位放射線治療のプランニングに対応する包括的な治療計画システムです。正確な線量計算が可能なMonte Carloアルゴリズムを搭載し、高精度な線量分布を提供します。生物学的な反応を考慮した線量制限を臓器別に設定することができるため、短時間で効果的なプランニングと、計画作成および治療ワークフローの最適化を実現します。
体表面光学式トラッキングシステムCatalystを使用した乳がん放射線治療
はじめに
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C-RAD社のCatalystは,可視光を利用した体表面光学式トラッキングシステムで,無被ばくで体表面イメージガイド放射線治療(Surface Image Guided Radiotherapy:SIGRT)およびリアルタイムの患者トラッキングを可能にした製品である(図1)。
本邦においては,2018年4月から乳房照射に対して体表面の位置情報によるIGRTが保険収載され,Catalystは患者への被ばくなしIGRTが行えるため多くの注目を集めている。また,将来的な心疾患リスクを減らすことを目的に,左乳房照射時に心臓への線量を低減させる深吸気息止め法(Deep Inspiration BreathHold:DIBH)においても,Catalystを利用することでより正確にDIBHを行うことが可能となった。各機能・特長に触れながら,このシステムを紹介する。
Catalystとは
Catalystは患者にスリット状の可視光を投影し,その反射光をカメラでとらえることで体表面の凹凸と距離を認識し,患者の体表面の三次元画像を取得している。
Catalystには3つの機能があり,それぞれcPosition(治療前の患者セットアップ),cMotion(治療中のモニタリング),cRespiration(呼吸波形によるゲーティング)となっている。従来のX線を使用したIGRTシステムと比較すると,可視光を使用しているため,被ばくなく安心してセットアップとモニタリングを行うことができる。さらに,視野が80cm×130cm×70cmと広範囲をカバーしているため,従来のIGRTでは撮影範囲外となる場所もとらえることが可能である。特に乳房への照射時は,顎,腕などの上げ方が照射ターゲット位置に影響を与えるため,照射野外のセットアップの再現性も重要となる。Catalystによる位置決め精度,動作検出精度はそれぞれ1mm以下を実現しており,非常に高い精度で臨床使用が可能である。スキャン速度は200フレーム/秒となっており,モニタリング時には患者の動きを直ちに検知することができ,安全な治療を提供できる。
cPosition:Non-Rigidアルゴリズムを使用した治療前のセットアップ
Catalystは患者の体表を認識しているため,従来の皮膚マーキングと比較すると,より多くの情報を使用してセットアップすることができる。特に,乳房の場合には皮膚マーキングは患者の心理的・肉体的負担につながるが,Catalystはこのようなマーキングを減らせる,もしくはなくせる可能性がある。Catalystを導入している施設では,セットアップ精度を検証しマーキングレス化を始めている。
CatalystのcPositionでは,単純な位置(寝台)の補正だけではなく,患者の姿勢の補正が可能となっている。従来のIGRTシステムでは,患者の姿勢は同じである前提でRigid(剛体)アルゴリズムでの照合で行われる。Rigidアルゴリズムの場合,ROI内に局所的な動きが含まれると全体的に補正計算が不正確になるため,動きのある部分をROIから除外する必要がある。しかし,Non-Rigid(非剛性)アルゴリズムを使用することで,局所的な動きを認識し,患者の姿勢を補正することが可能となる。姿勢を合わせる際には,基準画像とライブ画像にズレがあると,Catalystから患者の体表に直接カラーマップが投影される。図2に,実際のセットアップの様子を示す。カラーマップのプロジェクションにより,術者は患者を直接見ながら迅速かつ正確にセットアップすることが可能となる。
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cMotion:治療中のモニタリング
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放射線治療では,照射前に確認・補正した正確な患者位置が治療中においても変動していないことが非常に重要である。cMotionでは,セットアップ終了後から治療終了まで常に患者が適切な位置を保持できているかを監視することが可能である。
モニタリングにおいては2種類の動きを監視することができる。1つ目はターゲット位置の動きで,2つ目は局所的な動きである。Catalystでは常に患者の体表画像を取得し続け,セットアップ終了後からの患者ターゲット位置のズレ量をリアルタイムで計算し続ける。ターゲット位置の変動のみならず,腕や顎などの部分的な動きもとらえ,それらのズレが許容値を超える場合は自動で照射を中断する。図3に,乳房cMotion時の画像を示す。ゆっくりとした脱力やわずかな腕の挙動といった,従来の監視カメラでは認識し難い動きに対しても,変化をとらえ不適切な位置では照射を自動で中断する。これにより正確な位置を担保したまま,より安全な照射が実現される。
cRespiration:呼吸波形によるゲーティング
cRespirationでは,非接触で患者呼吸波形を取得することが可能である。従来のシステムでは,デバイスを患者に直接設置し呼吸波形を取得することが必要であったが,Catalystではそれらの作業は不要であり,術者の手間を減らすことができる。図4に,乳房cRespiration時の画像を示す。任意の2点の位置の呼吸波形を非接触で取得することが可能であり,これによりDIBH時には胸式呼吸から腹式呼吸へ変わっていないかなどの患者の呼吸方法の変動も確認できる。呼吸波形を取得する位置や息止めのレベルは記録され,毎回の治療では自動的に設定されるため,息止め再現性の向上が期待でき,より正確な位置への照射が可能である。
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まとめ
Catalystの3つの機能であるcPosition, cMotion, cRespirationを使用することで,乳房照射の患者において従来よりも皮膚マーキングを減らす,あるいはなくしながらも精度の高い照射を実現できる。また,照射中の安全性も格段に増し,より安全な放射線治療が実現できる。特に乳房照射の患者においては,皮膚マーキングの低減によって治療中のQOLの改善が,DIBHによって将来的なQOLの改善が期待され,Catalystはその実現に大きく貢献できる。
出典:月刊インナービジョン2019年6月