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#87:日本の病院の存続が危ない!

この文章は2025年4月に発行された病院広報誌77号に書いた文章です。

日本の病院の存続が危ない!

院長 加藤 奨一

日本病院会・全日本病院協会などの5病院団体が1月22日、福岡資麿厚生労働大臣に宛てて緊急要望を行ったことが報道されました。

日本病院会などが行った2024年度の病院経営定期調査によると、医業収益は増加したものの、費用増(材料費など)がそれを上回り、補助金減などもあり、赤字病院が増加し(75.5%)、赤字幅も大きくなりました。また、全国自治体病院協議会の経営状況調査では、2023年度は「10.3%の赤字」であったのが、2024年度は「14.5%の赤字」に悪化し、危機的な状況にあります。

物価高騰や賃金の上昇が続いており、一般企業ではコスト増を商品やサービスの価格に上乗せ(転嫁)することが可能ですが、公的医療保険制度の元では「公定価格」(診療報酬)が決まっており、各病院が価格にコスト増を上乗せすることができません。特に、スタッフを多く抱え、物品購人量の多い「病院」の経営は厳しくなっていきます。

コロナ禍前の2018年→コロナ禍後の2023年、一般病院の医業収入は約2.7億円・9.9%増加したのに対し、医業費用は約3.9億円・13.6%増加し、医業収支は元々の「マイナス1億円」から「マイナス2.2億円」に悪化しました。また、医業費用の約5割を占める給与費は1.2億円・8.2%、その他経費は2.8億・18.9%増加し、100床当たりの医薬品費は1億3300万円・27.6%、診療材料費は4400万円・14.4%、委託費は4200万円・22.2%、経費(水道光熱費など)は1900万円・13.6%、控除対象外消費税負担額は1500万円・48.9%とすべて増加し、医業収支が極度に悪化しています。

こうした点について5病院団体は、「物価が3%弱上昇し、職員の処遇改善が求められたにもかかわらず、診療報酬本体の改定率が0.88%と非常に低く設定された」、「過去のデフレ時代から継続されている『社会保障関係貨の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する』という財政制約が、物価や人件費が上昇するインフレ環境下にもかかわらず踏襲された」ことが原因だと述べています。

日本中の病院の経営状況は極度に悪化し、経営破綻の危機に瀕しています。このままだと、国民にとって絶対必要なはずの病院医療が日本からなくなります。コスト増に比例しての公定価格(診療報酬)の引き上げなど、何らかの対策をすぐにでも行わないと大変なことになります。

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