#86:医師の“新”臨床研修制度
この文章は2025年1月に発行された病院広報誌76号に書いた文章です。
医師の“新”臨床研修制度
医師の「“新”臨床研修制度」は今年で21年目を迎えました。医師の研修制度の歴史を少し紐解いてみたいと思います。
年配の方は「インターン」という言葉をご存じだと思います。医師の「インターン制度」は1946年から1968年まで、医学部卒業後に義務づけられた1年間の研修制度で、終了するまで医師国家試験の受験資格がありませんでした。研修期間中は学生でも医師でもなく、不安定な身分での診療を強いられ無給であったため、1967年に東大医学部のインターン生らが「医師国家試験ボイコット運動」を起こし、これを契機に「東大紛争」が勃発して、1968年に「インターン制度」は廃止されました。
その後、医学部卒業後すぐに医師国家試験を受けて医師免許を得ることが可能になりましたが、依然として労働面や給与面での処遇には問題が多く、特に私立大学病院の大半では社会保険にも加人できず、長時間の過酷な労働の対価として月額数万円の「奨学金」が支払われるのみで、生活費はすべて他病院での当直アルバイトなどに依存していました。また、大学病院における専門分野に偏った研修の弊害も指摘されるようになり、2004年4月から現在の「“新”臨床研修制度」が始まりました。
新しい制度では、プライマリ・ケア(初期診療)を中心とした幅広い診療能力の習得を目的として、2年間の臨床研修を義務化し、適正な給与の支給と研修中のアルバイトの禁止などが定められました。
内科(24週以上)、救急科(12週以上、4週まで麻酔科に振替え可)、外科、小児科、産婦人科、精神科(各4週以上)、地域医療(4週以上)の7診療科をローテートすることが必須で、2年間で最大8ヵ月間、別の診療科を含めて個人が希望する診療科にローテートすることもできます。
初期臨床研修医を受け入れる病院には、単独で研修医を募集できる「管理型研修指定病院」と、管理型病院から依頼されて研修を行う「協力型臨床研修指定病院」があり、当院は最初から両方の指定を受けています。最初は東京医科歯科大学と筑波大学の協力病院として2名ずつ4名の研修医を受けていましたが、最近は管理型として独自採用の研修医を受け入れています。現在まで67名の研修を行いました。最近は1学年6名の研修を行っています。
研修区が患者さんの診療に参加する場面もあると思いますので、ぜひご協力とご理解をお願い致します。