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#76:新型コロナ診療の交付金・補助金

この文章は2021年6月に発行された病院広報誌66号に書いた文章です。

新型コロナ診療の交付金・補助金

院長 加藤 奨一

昨年9月、政府分科会の尾身会長が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の東京都内の5つの公的病院 で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が30~50%も使われていないにも関わらず、132億円の補助金が支給され「ぼったくり」との批判がマスコミでされていました。

確かに、コロナ患者診療の多寡を反映した交付金や補助金の設定が公平になされていなかったという問題もありましたが、元々赤字に苦しめられている最中、感染拡大が始まった2020年2月~7月頃は受診抑制によりさらに大赤字になり、存続すら危ぶまれた病院が多いようでした。そうした経営環境だったため、この交付金や補助金で「あー、よかった。これで診療が継続できる」と、一息ついた病院経営者も多かったと思います。

病院は感染症患者の診療でとてつもないリスクを背負います。感染患者を診療する職員自身が感染するリスクもあり、職員一人ひとりの精神的ストレスは相当なものです。また、院内クラスターが発生した時の一定期間の診療制限で経営上も甚大な損失を被ります。

そうした医療機関の大きなリスクを考えると、交付金や補助金は決して高額で理不尽なものではありません。こうした交付金・補助金支給に対しマスコミが批判的な報道をすることに疑問を感じます。これまでも長年経営的にいじめてきて、こうしたリスクの高い新規感染症診療を行う医療機関に対し経済的支援をすることは、国民が受ける医療の維持・強化につながり、とても意味のあることだと思います。医療機関に対し「欲張り村長」的な取り上げ方はいかがなものかと思うのです。

医療機関の収入が増えるようなことがあると「また医者がお金を稼いで」と短絡的な偏向報道をすることにいつも憤りを感じます。医療機関の主な収入源である「診療報酬」は、医師の技術料にあたる「本体」と薬の価格である「薬価」とで構成されており、医療機関の運営は「本体」を原資に行われています。“医師の収入などとなる「技術料」”と悪意的な表現をするマスコミもあります。 “病院の収入が増える=医師の収入が増える”のような誤解を招く表現です。「技術料」の中の一部が医師の給与になり、多くは看護師、コメディカル、事務職員などの医師以外の職員の給与、薬剤や医療機材を購入する費用や病院の各種運営費用に充てられます。

今回のパンデミックのような非常時に医療機関の収人を減らすことは、患者さんの受ける医療の質や安全を低下させることに繋がるということをよく理解していただきたいと思います。

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