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#75:医師の意見を聞かない日本 ~ その2 ~

この文章は2021年11月に発行された病院広報誌65号に書いた文章です。

医師の意見を聞かない日本 ~ その2 ~

院長 加藤 奨一

この原稿を書いている9月下旬、新型コロナウイルス感染流行の「第5波」が急速に縮小し、19都道府県に発出されていた「緊急事態宣言」と8県に適応されていた「まん延防止等重点措置」が9月30日に「全面解除」されました。

夏休み、オリンピック、パラリンピック、お盆、シルバーウィークと、かなり人流が増加していましたが、なぜか新規感染者数の減少は続いています。専門家にも、理由が分からない、ワクチン摂取率が向上し続けているためか?国民一人ひとりが感染防止策を徹底しているためか?という意見もありますが、新型コロナウイルスの「自壊」という説を唱えている専門家もいます。

新型コロナウイルスなどのRNAウイルスは一本鎖遺伝子のため遺伝子複製エラーを起こしやすく、そのため変異を繰り返し、増殖能や感染力を増強していきますが、たまに自分の増殖に不利な変異をしてしまう「自壊」という現象を起こすこともあり、今の状況はそうなのかもしれないという説です。そうだとすると、今の感染減少は我々人間側の感染抑制努力の成果ではないということになり、今後の変異によっては感染力が高まり、「第6波」が到来することも十分あり得るということです。医師たちはそうしたことも心配してさまざまな制限解除は慎重に段階的に進めるべきだと主張しています。しかし、政府もマスコミも世間も、やっと普通の生活が戻る、という風潮に傾いています。

つい最近までオリンピックやパラリンピック開催の是非をめぐって国民的議論がされていたことは記憶に新しいことと思います。この時も、Go Toトラベル休止の議論の時と同じで、まずは感染拡大を一定レベル以下まで抑えて、その後、徐々にさまざまな制限の解除に進んでいくべきだという医師たちの意見は聞き入れられませんでした。本当に日本という国は医師の意見を聞かない国だと思います。

麻生副総理などは、医師がさまざまな自粛を要請していたが、人流が増加しても感染が減少しており、医師の意見は信用できない、くらいのコメントを出していました。ご親戚が九州で大病院を運営しているにも関わらず、なぜ医師の意見を聞かないのでしょうか。もしかして、ご親戚の医師たちとの接触で、医師という人種は生意気で気に入らない、嫌いだ、という幼児体験でも持たれているのではないかと勘ぐりたくなります。

政府もマスコミも国民も、もう少し医師の意見を聞いてもいいのではないでしょうか。

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