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#74:医師の意見を聞かない日本 ~ Go To トラベルで感じたこと ~

この文章は2021年1月に発行された病院広報誌64号に書いた文章です。

医師の意見を聞かない日本 ~ Go To トラベルで感じたこと ~

院長 加藤 奨一

この原稿を書いている11月下旬、新型コロナウイルス流行の「第3波」が日本を襲っています。新規感染者の増加はどこまで行くのか、恐怖感を持って眺めています。

テレビの報道番組を見ていると、感染症専門の多くの医師たちがGo Toトラベルの休止を強く要求していますが、政府はなかなか動きません。やっと、感染が拡大している一部の都道府県への訪問についてはGo Toトラベルの対象から除外、そうした都道府県から他府県への移動はまだ対象のままで、旅行を自粛要請するにとどまりました。

経済を回さないと自殺者が増えて、その数は新型コロナウイルスで亡くなる人を大きく上回るから、経済を止められない、というのが政府の考え方だと思います。一理ありますが、まずは感染拡大を抑えなければ、最終的に経済も回らない、というのが医師たちの大方の意見です。

こうした状況を見ていて、日本という国は医師の意見を聞かない国だなと思いました。新型コロナ対応だけではありません。
ここ数十年「医療費抑制策」で病院が瀕死の状態に陥っていることは再々書いてきましたが、病院経営者が改善を主張していることに政府は全く耳を貸しません。また、政府に不利な記事を書くと、記者クラブに呼ばれなくなり、厚生労働省から医療関係の情報をもらえなくなるのが怖いからなのか、マスコミも大きく取り上げてくれません。

医師たちはどんなに冷遇されても、使命感が邪魔してストライキはしませんし、経営的業績を上げることを目標に仕事をしてはいません。生活していけるだけの収入があれば、あとは多少のことは我慢してしまうというのが医師たちです。
診療や学術的活動で社会貢献したいという気持ちは強いですが、もともと政治的なことは好きではないし、政治的な活動も苦手です。

20年前、30年前なら、唯我独尊で自分勝手な診療をしている医師がいたり、故意に不正請求していた病院もあったかもしれませんが、今では診療ガイドラインも整備され、日本全国どこでも同じような診療が行われていますし、故意に不正請求する病院もないと思います。医師たちは非常に「善良」に仕事をしています。

政府もマスコミも国民も、もう少し医師の意見を聞いてもいいのではないでしょうか。今回Go Toトラベル続行の是非を議論している報道を見ていて、そんなことを強く感じました。

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