オピニオン

トップページ > 病院のご案内 > 病院について > オピニオン > #58:「持参薬・残薬管理」という“病院いじめ”

#58:「持参薬・残薬管理」という“病院いじめ”

この文章は平成29年1月に発行された病院広報誌48号に書いた文章です。

「持参薬・残薬管理」という“病院いじめ”

院長 加藤 奨一

最近一般病院の多くは入院医療費を「DPC」とういう包括医療費制度で請求しています。

例えば胃がんで入院して手術をする場合、手術料は厚生労働省が決めた金額を別に請求しますが、それ以外の入院医療費は、入院後経過した日数によって1日当たりいくらと決められています。
どんなに検査をしようが、どんなに薬を使おうが、1日分の入院医療費は定額となっていますので、病院の支出が多くなると、その患者さんの入院治療に関して病院は赤字になります。

一方、外来診療は今も「出来高払い」です。検査・処置・投薬などの個々の金額を合算して診療費を請求することになっています。

こうした制度の裏をかき、多くの病院で入院の前に外来で入院治療のための薬を処方し、これを入院時に患者さんに持ってきてもらい、入院治療にかかる病院の支出を減らすということが行われました。こうしたことに厚生労働省が目を付けました。入院の原因となった病気の冶療のために使う薬は外来で処方してはいけないことになりました。

これだけなら倫理的にも正当な規制だと思うのですが、厚生労働省はついでにもう一つ新たな業務を病院に押しつけました。
入院患者さんは高齢者が多く、普段から多くの医療機関に通院し、多くの薬をもらっていますが、飲み忘れたり、薬がなくなる前にまた新たに処方してもらうことが長年積み重なり、薬が余り、余った薬が使用されずに捨てられたりもします。こうした余計な薬剤費を日本中で合算すると、年間何百億~何千億円になると試算されています。

こうした薬剤費の無駄をなくし、医療費を削減しようと、入院後に患者さんが持ち込んできた薬(持参薬)の余った薬(残薬)全ての整理、「持参薬・残薬管理」を病院に義務づけました。

しかし、他の医療機関から処方されている薬はジェネリック薬が多いため、薬剤名では何の薬か分からないことが多く、また、持参薬全ての残薬数や今後の投薬可能日数をひとつひとつ計算しなければならず、患者さんが入院する度に薬剤師業務の大変な負担になりました。

最近、厚生労働省は医師や看護師などの医療従事者の業務負担軽減を推進し、それを病院に求めてきていますが、それとは真逆の、こうした医療従事者の業務負担増加策も強要してくるというのはどういうことでしょうか。「病院“いじめ”」としか私には思えません。皆さん、どう思われますか。

バックナンバー

↑To TOP