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#54:また「病院“いじめ”」

この文章は平成28年2月に発行された病院広報誌44号に書いた文章です。

また「病院“いじめ”」

院長 加藤 奨一

この原稿を書いているのは昨年の12月初めです。

この時期、来年度の政府の予算編成についての記事が盛んに新聞に出ており、「診療報酬マイナス改定やむなし」という文字が目立ちます。
国民の高齢化や医療自体の進歩により毎年自然に増えていく国民総医療費の増加を医療費の「自然増」と呼んでいることは以前このオピニオンでも触れました。普通に医療が行われていると、医療費の「自然増」は毎年1兆円近くになりますが、最近は医療費抑制策が功を奏し8500億円程度に抑えられています。財務省はこれを毎年さらに5000億円程度にまで減らすことを厚労省に要求しています。従って、来年度は「診療報酬マイナス改定」をせざるを得ないとのことです。

一般新聞では取り上げられていないもう一つの重要な記事が最近医療業界紙に載っていました。
11月上旬の中医協総会に提出された「第20回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」の記事です。

平成26年度の一般病院全体の損益差額は平均マイナス1億1778万4千円で3.1%の赤字でした。25年度のマイナス6191万2千円、1.7%の赤字からさらに5579万2千円赤字額が増えました。
中でも公立病院の損益差額は平均マイナス5億8141万4千円、11.3%と二桁の大幅赤字となりました。25年度のマイナス4倍、2341万円からさらに1億5800万4千円赤字額は膨らみました。

一方、国立病院は25年度の平均1億9573万6千円、3.3%の黒字から、26年度は1948万3千円、0.3%の赤字に転落しました。
また、国公立を除く全体をみても25年度の1406万2千円、0.4%の黒字から26年度には8536万千円、0.3%の赤字に転落しました。

国公立病院が赤字でも倒産しないのは、赤字が全て我々国民から徴収した税金から補填されているからです。補助金のない民間病院ならとっくに倒産し閉院です。
この補填額は日本全体で総額1.5兆円以上になると言われていますので、日本の総医療費は報道されている額よりさらに1.5兆円以上多くないと、日本中の病院が全て健全に黒字経営できないということになります。

こうした状況にもかかわらず、来年度「診療報酬マイナス改定」という、病院の収入減少策を執ろうというのが政府の方針です。

おかしくありませんか?「病院“いじめ”」としか思えません。皆さん、どう思われますか。

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