#40:地域医療支援病院
この文章は平成24年7月に発行された病院広報誌30号に書いた文章です。
地域医療支援病院
「総合病院」とは、許可病床数100床以上で主要な診療科(最低でも内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科の5科)を含む病院のことである、と以前は医療法で規定されていましたが、平成8年の医療法改正により廃止されました。平成9年にこれに変わって登場したのが「地域医療支援病院」です。
これは医療機関の機能別区分のうちの一つで、地域の病院、診療所などを後方支援するという形で医療機関の機能の役割分担と連携を目的に創設されました。
その承認用件は、
1)病院の規模は原則として病床数が200床以上の病院であること。
2)他の医療機関からの紹介患者数の比率が80%以上(承認初年度は60%以上)であること。あるいは、紹介率40%以上かつ逆紹介率60%以上であること。
3)他の医療機関に対して高額な医療機器や病床を提供し共同利用すること。
4)地域の医療従事者の向上のため生涯教育等の研修を実施していること。
5)24時間体制の救急医療を提供すること。
6)施設の構造が耐震等の必要な構造を有していること。です。
「地域医療支援病院」は、日本の医療行政が推し進める、医療機関の「役割分担」と「連携」を最も如実に具現化した病院のスタイルです。「(地域、医療、病診)連携」とは、大病院、中小病院、診療所は各々その施設に適した医療を行い、お互いにないものを補いながら地域医療を支えていきなさいということです。言い換えると、「病院」は病院らしい医療をやり、「診療所」と重複するような医療はやめなさい、ということです。今でも多かれ少なかれ病院を「かかりつけ医」としている患者さんは多いと思いますが、病院は「かかりつけ医」にはなれませんよ、「かかりつけ医」はあくまでも診療所の役割です、というのが国の方針です。
病院が求められている外来診療は、救急医療や診療所からの紹介患者さんの診療と、病院でしか診療ができない特殊な疾患の専門外来のみであり、ありふれた疾患を持った、落ち着いている患者さんの定期通院や、紹介のない軽症の初診患者さんの外来診療はやめなさい、と病院は国から指導されています。
今年4月の診療報酬改定では500床以上の病院に対して外来診療を縮小せよ、との方針が明文化されました。外来診療へのエネルギーを入院診療の方へ回しなさい、というのが医療行政の病院に対する要求です。病院に対するこうした圧力は今後も強まり、2年後にはおそらく200床以上の病院に対して同じ方針がとられる見通しです。319床の当院は当然今後この対象にされます。
そこで当院も「地域医療支援病院」となることにしました。初診患者さんの診療は紹介患者さんの診療を中心に行い、また、落ち着いた定期通院患者さんはどんどん診療所さんに定期通院してもらうように「逆紹介」していきます。今年度は外来診療に関して様々なシステム変更を予定しています。外来患者さんは戸惑うことが多いかもしれませんが、「国の方針」ですので、ご理解、ご協力をお願い致します。