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#38:歌舞伎

この文章は平成24年1月に発行された病院広報誌28号に書いた文章です。

歌舞伎

院長 加藤奨一

皆さん「医師会」というものをご存じでしょうか?その昔武見太郎先生が日本医師会会長をされていた時代があり、「喧嘩太郎」などとニックネームをつけられていました。国民の医師会への印象は一言で言えば、お金持ちの「圧力団体」なのかもしれません。

マスコミ報道される医師会に関することのほとんどは「日本医師会」の活動についてです。実は、医師会は日本医師会以外に各都道府県にある「都道府県医師会」と、各市町村や郡単位にある「市郡医師会」の3重構造になっています。私や私の病院の多くの先生は「古河市医師会」「茨城県医師会」「日本医師会」の3つの医師会に所属していますが、中には「古河市医師会」のみに所属し、「茨城県医師会」や「日本医師会」には所属していない方もいます。

市郡医師会に位置づけられる古河市医師会には現在100名ほどの会員がいます。2年に1度医師会員の親睦を深めるために懇親旅行を行っています。通常は土曜日の午後古河を観光バスで出発し、どこかの温泉地に行き、夜は宴会をし、翌日の日曜日は観光組とゴルフ組に分かれ、夕方また一緒にバスで帰ってくるというパターンが多いのですが、今回は東京へ各自電車で行き、新橋演舞場で歌舞伎を見、その後は皆で会食をし、都内のホテルに泊まって、翌日午前中ははとバスツアーへ参加、昼食を一緒にして解散というスケジュールでした。

そうしたわけで、なんと私は生まれて初めて生で歌舞伎を見る機会を得ました。初めての歌舞伎にはとても感動しました。歌舞伎というものの凄さ、日本の伝統芸能の凄さに感動しました。特に女形の歌舞伎役者の体力には驚きました。アスリート並の体力が必要だということを肌で感じました。毎日ジムにでも行ってトレーニングしていなければ、1時間踊り続けることは不可能でしょう。「凄い!」の一言でした。

また、自分が54年間一度も歌舞伎を見に行ったことがなかったことを悔いました。私だけではありません。この日同席した多くの先生方も歌舞伎を見るのが初めてだと言っていました。

今の日本の教育システムには日本の伝統芸能に接する機会はほとんど組み込まれていないでしょう。日本びいきの外国人よりも日本のことを知らない日本人が増えていると思います。

バブル崩壊後、様々な面で今だ日本の調子は悪い、と言わざるを得ません。「失われた10年」は「失われた20年」になりました。しかし、最近こうしたことは日本だけではありません。米国しかり、欧州しかりです。中国だって安心できないでしょう。私は国粋主義者ではありませんが、日本という国は世界の中でも独自の文化を育んできた国であり、戦後ずっと続いてきた欧米偏重、欧米模倣をそろそろ軌道修正する時期に来ているのではないでしょうか。日本人はもっと日本の伝統、文化を知るべきです。教育システムの中にも、子供の頃から日本の伝統文化・芸能などに接する機会を取り入れるべきです。

日本民族は今の世界的危機を脱する方策を世界に示すことができる民族かもしれません。他国の模倣ではなく、日本古来の文化、伝統をもう一度見直すことにより、そこから未来への道を切り開くヒントを得られるかもしれません。

今回初めて歌舞伎に接し、そんなことを思いました。

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