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#34:“消費税”論議を国民から

この文章は平成23年1月に発行された病院広報誌24号に書いた文章です。

“消費税”論議を国民から

院長 加藤奨一

一昨年9月に民主党が政権を取り、鳩山由紀夫氏、菅直人氏のふたりが首相になりましたが、この1年4ヶ月間の民主党政権に対する国民の感想はどんなものでしょうか。昨年の総選挙で民主党が掲げたマニフェストはことごとく修正され、国民は国家から“詐欺”に会った感が強いのではないでしょうか。外交面でも、普天間基地問題、尖閣諸島問題での政府の迷走ぶりは目を覆いたくなるようなものでした。

特に、2011年度予算編成に関して最近盛んに報道されている財政問題、財源問題、税制改革問題を見るにつけ、自民党時代と同様、財務官僚主導で“帳尻合わせ”で物事が決められています。元々ない財源を、少しずつこっちからあっちへ、あっちからこっちへと動かしているだけで、将来を見据えた根本的解決にはほど遠いものがあります。 管首相は首相就任時、“消費税”論議を本格的にスタートすると言っていましたが、参院選の惨敗により党内から猛反発を食らい、すっかり“消費税”論議からは腰が引けてしまいました。

日本の少子高齢化のスピードはとどまることを知らず、この先10年、20年で日本は超高齢化社会に突入します。医療、介護、年金といった社会保障費をどんどん増やさなければなりません。医療に関して言えば、現在提供されている医療を“現状維持”するだけでも毎年1.2兆円ずつ医療費が増えていくと言われています。国民が受ける医療の質と量を現状並みに維持するだけで20年後には何十兆円も財源を増やすことが必要になっていきます。また、医療の質の向上を図るためにはさらに多くの財源が必要になります。 財源問題が議論されると、必ず「“無駄”を削って財源を捻出する」という話になりますが、こうした“無駄”削減から捻出される財源は何百億円、何千億円という単位の話であり、赤字国債毎年40数兆円、累積700兆円という単位の話から見たら全く対抗できる額ではありません。そこで、どうしても“消費税”率を上げ、税収増を図らなければ、日本という国が存続できなくなるだろうと思います。

“消費税”率が1%上がると税収が2.5兆円増えると試算されています。消費税が10%上がり15%になれば25兆円の税収増となるわけです。“無駄”削減の何十倍、何百倍の効果があります。

先進国の消費税率はどこも10%を超えています。15%、20%の国だってあるわけです。こうした先進諸国の政策と比較しても、日本の消費税率が5%であること自体が異常です。

国民もこうしたことをもっと理解しなければなりません。もちろん「“無駄”を削減する」ことも併行してきちっとやらなければいけませんが、それだけで財政赤字を改善することは不可能であるという認識を国民が持つべきです。 「税金をあまりとられないけど、いざとなったときに国は国民の面倒をろくに見てくれない」方がいいのか、「税金をたくさんとられるけど、いざとなったときは国がきちんと国民の面倒を見てくれる」方がいいのか、国民はしっかり考えるべき時期にきていると思います。

政治家が選挙対策から“消費税”論議を“封印”している現在、国民の方から“消費税”論議が沸騰するように政治家に圧力をかけるくらいでなければいけないのではないでしょうか。

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