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#32:女性医師が抱える問題~勤務医不足は解消されるのか?~

 この文章は平成22年4月に発行された病院広報誌22号に書いた文章です。

女性医師が抱える問題
~勤務医不足は解消されるのか?~

          院長 加藤奨一

新病院開院から4年が経ちました。新病院が開院した直後から私がずっと心にあたためているのは「周産期母子医療センター」の設立です。古河市に隣接する境町には地域周産期母子医療センターがありますが、古河市内で現在出産を扱っている医療機関は2つしかありません。人口15万人弱の市に「周産期母子医療センター」があってもいいと思います。

茨城県は8つの保健医療圏に分かれており、「基準病床数」という保健医療圏毎の全体の病床数が決まっています。他の7つの保健医療圏では「基準病床数」は充足していますが、友愛記念病院のある「古河・坂東保健医療圏」は「基準病床数」が不足しており、今年4月から各医療機関に対し増床の申し出を受け付けることになりました。

そこで、この機会に「周産期母子医療センター」設立を具体的に考えようと思い、先日ある大学の産婦人科教授と面談し、産婦人科医師派遣の打診をしてきました。教授との話の中で出てきたのが、以前私がこのオピニオンでも述べた「女性医師」の問題でした。

産婦人科や小児科には多くの女性医師が進みます。ここ数年産婦人科や小児科を選択する新人医師の半数以上は女性医師です。大学によっては7,8割を女性医師が占めます。しかし、女性医師の場合、卒後5年、10年過ぎやっと戦力となる頃、結婚や出産を契機に第一線を離れていく方が非常に多いのだそうです。ちなみに、この大学では今年11人の医師が産婦人科医局に入局しましたが、男性が3人、女性が8人だったそうです。おそらく5年過ぎた後に第一戦の勤務医として働いている女性医師は1人か2人で、他の女性医師は何年間か産休や育休に入り、それが過ぎた後も当直は不可能、多くは週2,3日の婦人科健診主体の非常勤勤務にしか復帰しない、と教授はおっしゃっていました。

こうした状況なので、産婦人科や小児科の勤務医不足が解消するのはまだまだ先であり、2年後スタートする「周産期母子医療センター」へ医師派遣のお約束はできかねる、というお返事でした。
数年前から行政も動きだし、病院附属の託児所建設への補助など、女性医師への支援を始めましたが、もっと抜本的な解決を図らない限り、女性医師が第一線の勤務医として一生働き続けることは困難です。

根本的原因は、女性医師だけの問題ではありません。男性医師も含めた勤務医自体の劣悪な労働環境だと思います。「昼も夜も日曜も祭日もなく働き、患者さんの健康や命を守る」という使命感や誇りは医師として仕事をする上でとても大切で、“医療”に携わる者の“美徳”だと思いますが、結婚し子供を持った女性医師が男性医師と同等に働けるためには、勤務医自体の労働環境そのものを改善しなければいけません。そうしなければ、医学部進学の男女比が逆転しつつある現在、「勤務医不足」はいつになっても解決しないのではないでしょうか。

そのためには、もっともっと医師を増やし、勤務医1人あたりにかかる負荷を軽減しなければなりません。当然「医療費削減」などあり得ません。

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