#30:医療関係の民主党マニフェスト
この文章は平成21年10月に発行された病院広報誌19号に書いた文章です。
医療関係の民主党マニフェスト
院長 加藤奨一
今回の衆院選で民主党が大勝し、政権交代が行われました。選挙前に出された民主党マニフェストには、以前から医師達が主張し、自民党政権からは無視され続けてきた数々の医療政策が盛り込まれています。その一部を紹介します。
1) | 自公政権が「骨太の方針2006」で打ち出した社会保障費削減方針(年2200億円、5年間で1兆1000億円)は撤廃。 | |
2) | 患者・家族の立場に立って、医師・医療機関との意思疎通を円滑化する「医療対話仲介者(メディエーター)」を一定規模以上の医療機関に配置。 | |
3) | 医事紛争の早期解決を図るため、すべての公的保険医療機関、薬局、介護施設で発生した医療等事故事例全般を対象に、公的な無過失補償制度を創設。 | |
4) | 後期高齢者医療制度は廃止。被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域医療保険として、医療保険制度を一元的に運用。 | |
5) | 新しい医療技術、医薬品の保険適用を迅速化。 | |
6) | 経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の平均的な人口当たりの医師数(人口1000人当たり医師3人;日本の現状の1.5倍)養成を目指す。大学医学部定員を1.5倍に。 | |
7) | 医療機関の連携、短時間正規勤務制の導入、国公立病院などの定数増、公的兼業を解禁。 | |
8) | 臨床研修を充実。 | |
9) | 医師養成、活用策により実働医師数を増加させるとともに、勤務医の不払い残業を是正し、当直を夜間勤務に改める等、医療現場の労働環境を改善。子育てや介護をしながら勤務する医療従事者が働き続けられる、また復職しやすいよう、院内保育所の整備やオープン化、保育所への優先入所、病児保育の充実、育児支援などを拡充。 | |
10) | コメディカルスタッフの職能拡大と増員を図り、医療提供体制を充実。看護師等の業務範囲を拡大し、医療行為の一部を分担。病院勤務医が診療のみならず事務手続きをしなければならないことにより医師不足に拍車がかかっていることから、医師の事務を分担する医療事務員(医療クラーク)の導入を支援。 | |
11) | 救急業務を市町村から原則的に都道府県に移管し、救急本部に救急医療の専門的知識・経験がある医師を24時間体制で配置。 | |
12) | 累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車。総医療費対GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げ。地域医療を守る医療機関の入院については、その診療報酬を増額。 | |
13) | レセプトのオンライン請求を「完全義務化」から「原則化」に。また、外来管理加算の5分要件を撤廃。 | |
14) | がん検診の受診率を大幅に向上させるよう、受診しやすい体制を整備。 | |
15) | 医療保険から給付される現在の出産一時金(2009年10月から42万円)を見直し、国からの助成を加え、出産時に55万円を支給。新生児特定集中治療室(NICU)を現行2000床から当面2500床へと増床。 |
以上が民主党マニフェストの医療関係の主だったものです。これらの政策が本当になされるかどうか、国民は十分に監視し続けなければなりません。