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#03:外科医の体調と仕事の質

 この文章は、平成12年12月に、私が参加している「医療を考える」という趣旨のメーリングリストに投稿したものです。
 医療関係の情報を提供しているあるホームページで見つけた、ある外科医の投稿文の紹介です。「匿名」の投稿文だったので、どこの大学のどなたが書かれたのかは不明で、今回リンク先を掲載しようと調べてみましたが、すでにもうリンク先は消滅して、分かりませんでした。
 「無断掲載」になるかもしれませんので、この文章を書かれた方が、当院の HPのこのコーナーをご覧になったら、連絡を下さい。

外科医の体調と仕事の質


こんばんは。
また加藤です。

もういいかげんにしろ、と言わないで読んでみて下さい、皆さん。
一般のひとは自分が病気になったり、ご家族、知り合いが病気にならなければ、病院などに行かないでしょうが、医者は 365日毎日、昼も夜も病院にかかわっているので、医療に対する問題意識はものすごく高いし、医療行政、医療制度に対する不満も大きいのです。
医療界以外の多くのひとに知ってもらいたいことが山ほどあります。
マスコミはこういうことは全く取り上げてくれないので、自分で一生懸命発信することにしました。
ごかんべんを。

先日インターネットで外科医からのこんな投書を読みました。
自分の今感じていることにとても近く、共感を覚えたので、全文を無断で掲載させてもらいました。
無断転載として法律に触れますかね?この MLのひとは黙っていてください。
以下のような内容です。

『外科医の体調と仕事の質』

 私は卒後 15年の外科医で現在留学中ですが、以前より外科医の体調と仕事の質については気になっておりました。
 手術の前日、夜 10時頃にようやく時間ができ、患者さんのご家族に手術説明をしようとしたとき、「先生もう詳しい説明は構いませんから、早くおうちでお休みください。ぜひいいコンディションで親父の手術をしてください」と言われたことがあります。
 長い手術の前に片付けておきたい仕事が山ほどあり、手術の前日に無理をすることがままありますが、気をつけなければいけません。
 解決の糸口として考えられるのは、外科医の仕事の効率化です。たとえば、手術所見や紹介状の返事、保険の書類など書き物に追われる時間が多いのですが、欧米では口述筆記が発達しているので、医師はテープに吹き込むだけであとは秘書がタイプします。このためには秘書を雇うという投資が必要ですが、大きな事故の保障に比べれば安いものです。
 ただし外科医の側にも、「手術前日の節制」というプロ意識が必要で、時間ができたからといって飲みに行ってしまってはいけません。
 それからこれは大学病院(特に国公立の)で言えることですが、若い外科医( 30から40歳台)に安定したポジションが与えられていません。多くの場合、よくて非常勤助手、悪ければ研究生として学費を払って働いています。
 学位授与、将来の就職先の人事権などで、教授の権限は強力で、このような状態を拒否することができません。
 このためほとんどの医師は、平日週2回や3回、週末月1から2回、外の病院に当直のアルバイトに行きます。昼間働いてもお金にならないから、夜働くというわけです。しかし、当直あけでも翌日昼間は大学病院でフルに働きます。当然体調は良いわけはありません。
 おそらく半数以上の医師が無給に近い状態で働いているにもかかわらず、大学病院経営が金食い虫なのはどうしてか理解に苦しみます。
 当直の問題は一般の病院でも言えることで、当直明けの医師が翌日休めている病院がどれだけあることでしょう。ほとんどは翌日もフルに働いているはずです。もう「外科医は体力が勝負」という言葉だけで片づけられる世の中ではないと思います。事故を起こしてしまってから、「体力が勝負ですから」という言い訳は通用しません。
 医療費削減が叫ばれている中、医師の増員、労働時間の制限など「何をいっているか」と叱責されそうですが、こんなにぼろぼろになりながら外科医が仕事をしているのに、病院は赤字ですし、若い外科医は経済的には恵まれていません。いったい我が国のシステムのどこに問題があるのか。この労働に見合う利益はどこに行ってしまっているのか。
 根本的にはこういうところを見直さないと抜本的な事故予防、外科医のフィジカルコンディションの維持は難しいように思います。

 以上のような文章です。

 現場で同じ職種で頑張っている僕には、涙が出るくらい「その通り!」と言いたい、今の日本の外科医の勤務状態を表した文章です。
 ちょっとした余談として読んでください。

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